君と煙草と僕の夢
「…里歌の調子は?」



少し気まずそうに、祐次が口を開く。



「別に。元気なんじゃないか」

「今日は顔を見たか?」

「いや?起きたらもうバイトに行ってたし」

「…お前さ、里歌のこと、少しは気にかけてやらないわけ?」

「なんで?」

「あいつが学校を辞めるとき、まっさきに里歌を引き取るって言ったのはお前だぞ」

「ああ…そうだけど」



こいつは里歌のことを心配している。里歌をかくまっている俺よりも。



「ちゃんと食って寝てるか?里歌」



ウィンナーコーヒーをすすりながら、祐次は言った。



「食ってはいるよ。まあもともと食が細いからあんま食べないけどな」

「夜は寝てないのか?」

「そうだな…昨日は眠れなかったようで、夜中俺のベッドに来たよ。そしたらすぐ寝た」

「……。体調、あんま良くないみたいだな」

「……」



俺は黙ってコーヒーを飲んだ。確かに里歌の体調はいいとは言えないかもしれない。ふと見ると、身体が痙攣しているときもある。細い指先も、震えて。



「なあ」



少し間があって、祐次が言った。



「里歌は、俺のところに来たほうがいいんじゃなか?」



何度も言っているだろう。それは駄目だ。



「前にも言ったけど…お前のところにいたんじゃ、里歌の病気は善くならない」

「俺じゃ駄目か」

「正直そう思うよ。お前は里歌を圧迫してる。だから俺の家に住ませたい」

「……」

「里歌が心配だよ。あいつの将来が」

「駄目だ。お前のところにはやらない」



里歌は俺のものだ。

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