一粒の涙。~原因は君。~
「よろしく」
ニコニコとスマイルを飛ばす男。
「......」
“話しかけないで”オーラを出す。
私は顔を逸らした。
でも、私のことはお構いなしに話し続けた。
「俺、酒井那智。バスケ部に前まで所属してたんだ」
酒井那智...。
悪くない名前だと思った。
いや、逆にいい名前だと思った。
目までかかる茶色の髪。
優しく光るシルバーのピアス。
私たちとは異なる制服。
「あんたは?」
無邪気な笑いが私の心を通す。
迷いない瞳。
淡くて、吸い込まれそうだった。
初対面で“あんた”といわれたのにも驚いた。
でも、私は無視した。
なんて言っていいのかわからない。
「なんで何も言わないん?」
まだ訛りのある口調だった。
それは彼の気遣いであり、優しさだった。
すると、急に名前を探し始めた。
「あった」
また無邪気な笑いをして私の方を見る。
「神無月...阿南ちゃん」