一粒の涙。~原因は君。~


「よろしく」

ニコニコとスマイルを飛ばす男。

「......」

“話しかけないで”オーラを出す。

私は顔を逸らした。

でも、私のことはお構いなしに話し続けた。


「俺、酒井那智。バスケ部に前まで所属してたんだ」

酒井那智...。

悪くない名前だと思った。


いや、逆にいい名前だと思った。


目までかかる茶色の髪。

優しく光るシルバーのピアス。

私たちとは異なる制服。


「あんたは?」


無邪気な笑いが私の心を通す。


迷いない瞳。

淡くて、吸い込まれそうだった。


初対面で“あんた”といわれたのにも驚いた。

でも、私は無視した。


なんて言っていいのかわからない。


「なんで何も言わないん?」


まだ訛りのある口調だった。


それは彼の気遣いであり、優しさだった。

すると、急に名前を探し始めた。


「あった」


また無邪気な笑いをして私の方を見る。



「神無月...阿南ちゃん」




< 4 / 6 >

この作品をシェア

pagetop