一粒の涙。~原因は君。~


進学してから、初めて呼ばれた名前。

「あってるやろ?」

君が笑うから泣きそうになった。

「......正解」

照れくさくも私は答えた。

答えてあげた、という表現の方が正しいと思うけれど。

「えっ。マジ」


突然明るくなる表情。


思わず笑ってしまう。


「ふふっ」


つい出てしまった笑みに自分でも驚きを増す。


「笑った」

「えっ...」



周りのみんなも驚きを隠せずにはいられなかった。


私が進学して、

この教室に入って、

一度も笑ったことなんてなかった。


ねぇ...でも、今。

笑ったよね。

私、今、笑ったよね?



< 5 / 6 >

この作品をシェア

pagetop