女王様と王子様

女王様と家庭事情


「それでさ───」

「あはは!何だよそれ!」

『そこの男子、あと5秒以内に並ばないとその役立たずな脳にカニ味噌 詰めるわよ』

「「………」」


ドスのきいた声で言ってやると、さっきまで喋っていた二人は定位置に戻った。

ったく、この私が指示を出してんのにくっちゃべってんじゃないわよ。

男女が綺麗に二列に並んだのを見て、腕を組んだ。
私がこんなことをしているのには理由がある。
今日は校外学習の日。と言っても、来たのは地方の少し大きめの水族館で、遠足と何ら変わりはない。
委員長である私と藤臣は現地に集合したクラスメイトを並ばせていたわけだ。


「山本さん、女子の点呼済んだ?」

『とっくにね。女子は全員出席よ』

「そっか、男子も全員出席。先生に伝えてくるよ」


担任の方へ向かう藤臣を見て、あの日のことを思い出した。


─姉さんが好きなんだ─


あれから数日、その話については何も触れていない。触れてはいけない気がした。
せっかく藤臣の弱味を握ったというのに、これじゃ意味がない。

“誰にも言えない秘密を共有する仲”

そんな奇妙な枠組みが私の潜在意識にあった。
が、認めたくはない。
…こんなはずじゃなかったのに。何をやってるんだ 私は。


「今から言うことは絶対に守るように!!」


全クラスの点呼が終わり、先生達から諸注意を聞く。
本来、新しいクラスメイトと親睦を深めるために行われるこの行事。
この諸注意を聞き終わったら解散まで自由時間になる。

特別親しい友人もいない私にはこの行事があろうと無かろうと関係ないけど。
今日は休んでゲームの続きでもすればよかった。


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