女王様と王子様
『…で、話って何なの?』


ベンチに座って足を組む。
藤臣は隣に座って私を見た。


「山本さんの方が聞きたいことがあるんじゃない?」


図星。
正直、“姉が好き”という事実は信じがたい。
だって姉弟でしょ?
私に置き換えれば、潤が私を好きになるわけでしょ?
いくら私が美人だからってそれはない。…と思いたい。


『そうね、あんたの過度なシスコン発言について詳しく聞きたいわ』


本当は素直に問いたかったが、言い当てられたのがなんだか癪だったのでこんな言い方になった。
藤臣はそれに不機嫌になるわけでなく、少し考えて言った。


「シスコンじゃないと思うんだ。戸籍上は姉弟だけど血は繋がってないし」

『義理の姉ってこと?』

「父の再婚相手の娘だったんだよ」


藤臣が言ったことをまとめるとこうだ。

藤臣の母親は藤臣を産んでそのまま亡くなった。
その後、父親は藤臣が6歳の時に再婚。その相手の連れ子が今の姉だったというわけだ。

…こんな昼ドラ、どこかで見たことある気がする。


「姉は僕に見向きもしないけどね」

『そう?義理の弟がこんなに出来がいいんだから、気にならないわけないと思うけど』

「ありがとう」


最初、何に対してのありがとうなのか分からなかった。
だが自分の言った言葉を脳内で繰り返すと、とんでもないことを言ってしまった気がした。


『ほ、誉めてないわよ!出来がいいって言ったのはあくまで客観的な意見で、私は別にそんなこと思ってないから!』

「うん。ありがとう」

『私の話聞いてないでしょ』


駄目だ。こいつ相手にいくら否定しても伝わらない。

私は諦めて溜め息をついた。
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