女王様と王子様
『い、妹が…』
私の持っている袋を取ろうとした藤臣の手が止まる。
どうして。
どうして藤臣相手だとこうも上手くいかないの。
『妹が好きそうだなって、思っただけ、よ』
「…それであんなに見てたの?」
『……悪い?』
「あはは、」
藤臣は笑って、そっか、と納得した。
「じゃあこれは山本さんからのお土産ってことで渡してよ」
『出来ないわ。あんたこそ、大好きなお姉さんにあげたら?』
「姉は仕事で海外にいるから無理なんだ。…だから、ね?」
『…なら、お金だけでも返す。高かったでしょ』
「いらない。僕が勝手に買ったんだから。それにお礼のつもりなのに山本さんが払ったら意味ないじゃない」
『…………』
「山本さんって家族思いだね」
『…ふ、普通よ!』
いきなりの誉め言葉に顔が少し熱くなった。
可愛いや綺麗や美人は言われ慣れているが、“家族思い”なんていうのは初耳だ。
『…帰る!』
「うん、また明日」
私は顔を見られないようにして早歩きで家に帰った。
『…最悪』
今日は散々な1日だ。
─家族思いだね─
『…ムカつく…』
どうしてこの私が、その程度の言葉で動揺しなきゃなんないのよ。
おかしいおかしいおかしい!
しばらく言い様のない気持ちがぐるぐる渦巻いていたが、
「とうこちゃん おかえりー!すいぞくかん、たのしかった?」
『……うん』
実咲の顔を見ると、そんなことどうでも良くなってしまった。