女王様と王子様
「山本さんって…どんな人なのかな」


昼休み、クラスの友達に聞いてみた。
ら、驚いた顔をされた。


「山本さん?」

「なんだよ藤臣!山本さん狙いかよ!」

「そういうわけじゃ…」

「やめとけやめとけ!いくら藤臣でも山本さんはハードル高ぇよ」


僕の否定の言葉なんて聞きやしない。
笑いながら手を振る友達にため息が出た。






─────…






1日の授業が終了して、部室に向かう途中。


「付き合ってほしいんだ」

『無理です』


ちょうど角を曲がろうとすると、男女の声が聞こえた。
盗み聞きする趣味はないが、部室にはこの道を通らなければならない。


「好きな奴でもいるの?」

『いませんけど』


女子の言葉遣いからして相手は先輩らしい。


「山本、俺は本気なんだ」


山本?山本ってあの山本さん?
立ち去ろうとした足を止める。


『…しつこい』

「え?」

『しつこいっつってんのよ。断ってるんだから潔く諦めたらどう?』

「なっ!」

『私と付き合いたいなんてよく言えたもんだわ。先輩だからって調子に乗らないで』


足音がこっちに近づいてくる。
僕は咄嗟に逃げることも出来ず、山本さんと鉢合わせしてしまった。


『何あんた』

「…………」


色素の薄い肌と長い髪。
二重の大きな瞳は、僕を睨むようにして見た。


「ごめん、盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど」

『…別に』


どこぞの女優顔負けのセリフを吐き捨てると、山本さんはそのまま立ち去ってしまった。





─────…






それから、彼女の噂は聞かなくても耳に入るようになった。
美人だが高飛車で人を全く寄せ付けない。文句を言おうものなら、容赦なく刃を向けられる。
その有り様はまるで女王様ようだと。


< 23 / 47 >

この作品をシェア

pagetop