女王様と王子様
『何?』


藤臣は弓道の胴着を着ていた。
弓道部だったのか。どこまでも期待を裏切らない奴だわ。

走ってきたらしく切らした息を整えた。


「何ってほどの用事じゃないんだけど…」

『…用が無いなら呼ばないで』

「あはは、手厳しいな」


何笑ってるのよ!そこはムカつくところでしょ!
こういうところが気に入らない!


「一緒のクラスになった人はほとんど話したんだけど、山本さんはまだだったから」


新しいクラスで教室に集まった時、藤臣の周りにみんなが集まっていたのを思い出す。
私はもちろんそんなことはしなかった。

藤臣と話すためにわざわざ席を立つなんて労力の無駄遣いだ。


『そう。良かったわね、私と話せて』

「僕としてはもっとちゃんと話したいんだけどな」

『私がちゃんと話してないっていうの?』

「そうじゃなくて…目を見て、さ」


その言葉に反らしていた目を藤臣に向けた。
端正な顔がこちらを見ている。

何それ、キモッ!


『…私忙しいから。それじゃ』


私はそれだけ言うと藤臣に背を向けて歩く。
後ろで「また明日」という声がしたが振り向かなかった。


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