女王様と王子様
「いじめとかこっわーい」

「…違っ、」

「だからさぁ、足りないっつってんじゃん。どうす『足りないってこれのこと?』

「「「「…!」」」」


5人全員が私の方に振り向く。


「…それ…」


私の右手には昨日沢田が落としていったマスカラ。
結局あの時、薬局に戻って買い取ったのだ。
レジで支払いをしている時に藤臣が満面な笑みだったのを覚えてる。
今思い出してもムカつく。でも私が盗んだと思われるよりはマシだった。


「ど、どうして………─!」


沢田は思い当たるふしがあったのか、口を手で覆った。
私はそんな沢田の前にマスカラを差し出す。


『税込1680円』

「え?」

『私があんたの代わりに支払ったのよ?返金するのは当たり前でしょ?』

「…あ、」

「ちょっと待ってよ。いきなり来て何なワケ?」

「意味不明なんですけどー」


ああもう 鬱陶しい…!


『…沢田が盗んだマスカラの代金を請求した。それだけよ』

「はぁ?盗んだ?」

『あんた達がこの子にタカったんじゃないの?』

「別に私達はそんなこと頼んでないし」

「ただこのマスカラ欲しいなーって話してただけだよね」


なるほど。
そう言えば沢田がマスカラを持ってくると分かってたんだろう。
もし沢田が持って来なかったら、その時はもう用済み。彼女はまんまと1人になる。


「大体さぁ、山本さんには関係なくない?」

「山本さんの方が沢田にタカってんじゃん?」

『は?』

「お金請求するとか、マスカラだって自分が欲しかっただけなんじゃないの?」

「あはは、言えてる~!」


浅はかすぎる。何でこいつらはそんなに馬鹿なんだ。
こいつらといるくらいなら1人でいる方が何倍もマシだ。


『そうね。確かに関係ない』

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