女王様と王子様
次の日。
『…何これ』
下駄箱を開けると、中が泥だらけだった。それに加えて、上靴に落書きもしてある。
えーっと…「バカ」「死ね」「ウザい」…ブス…は無いわね。よし。
私はそれだけ確認して、土を軽く払ってからそれを履いた。そのまま教室に向かう。
十中八九…いや、100%昨日のギャル軍団の仕業だろう。上靴に落書きって…今時のドラマでも見たことないわよ。
廊下を歩いている間も、私の足元を見て通りすがりの生徒がざわついた。
私はたいして気にせず、教室に入る。どうやら机までは被害にあってないらしい。
「山本さん その靴、」
『あんたには関係ないわ。放っておいて』
心配してくれたのは昨日 喋った体育委員だった。
だけど、その心配は今お呼びでない。こういうのは騒ぎになればなるほど、した方の思う壷だ。
体育委員の彼女は、私の返事に少し傷付いたような顔をして去って行った。
「山本さん」
次に声をかけてきたのは藤臣だ。私は返事をせず、黙って席に座る。
「何かあったの?」
『別にたいしたことじゃないわよ。どこにでもいるのね、こういうことする馬鹿な奴』
「…そう。僕に出来ることは?」
『関わらないで』
女子のいざこざに男子が関わると余計に面倒になる。
ましてや藤臣なんてもっての外だ。
「分かった」と笑って自分の席に戻る藤臣を見て、周りの女子が何か言っていたが、聞こえないふりをした。