女王様と王子様
ど…どうして…
『どうしてそうなるのよ...!』
ゲーム機のコントローラーを放り投げて、後ろに倒れる。
テレビ画面では、タクミが《ごめん、君のことは友達としてしか見れないんだ》
と苦笑していた。
ありえない!何で?!どうして?!
どこでルート間違えたのよ!!
私からの告白を断るなんて信じられないわ!
『何だってのよ…』
しかし思い当たる節はあった。
…あそこで相談するべきだったんだわ。最後のセーブどこでしたっけ。
そんなことを考えながら天井を見ていると「姉ちゃん」と呼ぶ声と同時に襖が開いた。
寝転んだまま、頭だけを動かしてそちらを見るとお風呂上りなのかバスタオルを肩に掛けた潤がいた。
『潤、何か用?』
「声 風呂場にまで丸聞こえ」
『それは悪かったわ。気をつける』
どうやら話はそれだけではないようだ。
部屋に入ってきて座る潤。私はそのままの体勢でタクミが映るテレビを消した。
何?何なの?なんか恐いんだけど。
「姉ちゃんさ、何かあった?」
『何か…ついさっきタクミにフラれたわ』
「…そっちじゃなくてさ」
学校で、と付け加える潤。
さすが血を分けた弟と言うべきか、何かを感じ取ったらしい。
── いつだったか、前にもこんなことがあった。
『…何でも持ってると言われたわ』
「え、誰に?藤臣さん?」
『あいつはそんなこと言わないわよ。…ギャル軍団のパシリにね』
「へぇ」
潤は少し考えて口を開いた。
「姉ちゃんはさ…つーか姉ちゃんに限らず俺も実咲もだけど」
『?』
「結構 顔 良い方じゃん」
『…自分で言う?』
上半身だけ起こして潤を見た。お前が言うな、と目を細める潤。
男が言うのと女が言うのじゃ違うのよ。
「だから何でも持ってるように見えんじゃねぇの?特に姉ちゃん成績もいいし…友達いないけど」
『あとお金もね』
そう言えば 潤は確かに、と笑った。
「でも珍しいな。姉ちゃんがそのパシリ?と関わり合うなんて」
『成り行きよ』
それもこれも全部藤臣のせいだ。
「それでも珍しいじゃん。他人に何言われようとあんまり気にしなかったのに」
『…イライラするのよね』
沢田を見てるとイライラする。
周りの反応を気にして、優しくして笑って言うことを聞いて。そして都合良く利用される。
あれじゃあ、まるで ──
「…姉ちゃん」
『ん?』
「もし、もしだけどさ、中学の時みたいになってんだったら…」
『大丈夫よ 私は』
「…ならいいけど…周りに頼った方がいいんじゃねぇの?藤臣さんとか」
『却下。あいつに頼るなら藁に縋るわ』
「あっそ」
潤は立ち上がって襖を開けた。
「風呂、もうすぐ母さん入るから上靴 あげておいた方がいいよ」
出際、そう言った潤にため息が出た。
しまった、洗った上靴を乾したままだ。
それで潤のやつ 変に学校のこと聞いてきたんだわ。
中学の頃の話までしてくるなんて…
『…昔のことよ』
私はもう一度天井を見て、このモヤモヤをどう発散させるか考えた。