女王様と王子様
────…
《トウコ、最近 俺おかしいんだ…トウコを見てると…胸が熱くなる》
このゲームはフルボイス。
ヘッドフォンを繋いでいる私の耳へ一般人より数段良い声が伝わる。
三次元で聞くと歯の浮くようなセリフも、二次元というだけでいくらかマシだ。
液晶の中で頬を染める彼に私はコマを進めた。
《もしかして俺、トウコのこと…
………いや、何でもない。》
何よ。私のこと好きなんでしょ?だったらさっさと言いなさいよ。
ハッキリしない男め。
私は声に出さず、心で呟く。
ふう、と溜め息をついて時計を見るとかれこれ四時間はやっていた。
どうりでハート(ゲーム上の好感度)がこんなに溜まってるわけね。
私は浮気はしない主義なので、このキャラと決めたキャラは一途に攻める方だ。
だからもちろん一人のキャラをクリアするのは最短ルート。
『早く告白してきなさいよ。OKしてあげるから』
ストーリーを進めるために、コントローラのボタンを押した瞬間だった。
スパン、と襖の開く音。
『…ったく潤!声くらいかけ、………』
「ごめん。一応声かけたんだけど返事が無かったから…」
潤とは違う、上品で優しい声。
困ったように笑う端正な顔は、確かに奴だった。
……な、
『…藤臣!?』
ブチッ
勢いよく立ち上がったせいでテレビに繋いでいたヘッドフォンが外れた。
し、しま…っ!
《好きだよ、トウコ。世界で一番。》
私と藤臣の間にキザな告白が響く。
「…………」
『…………』
バ レ た !!!
固まる私と藤臣を他所に、襖の向こうで潤が溜め息をついた。