あの足があがるまでに
お姉さんの表情が硬直した。





「いい訳ねぇだろ、大輔」

「どこがいいの!?ほんっと馬鹿だよ、大輔は!」




「沙良・・優哉さん・・・?」




沙良と優哉さんがいた。怒った顔で、泣きそうな顔で。

「だっ、大輔の足がなくなっちゃったら・・・・短長走部はどうなるのっ・・・・うぅぅ・・」

「こんな小さなマラソンより大きな目標があるだろう・・・?俺もそのために教えに来てるんだ」



「・・・・・・・ごめんなさい・・・・。でも・・そしたらマラソンは・・」


「だから、走らなくていいって言ってるの!・・・・・ばかぁ・・・うぅっ・・えぐっ・・・はぅ・・・」




「俺は、大輔を信じてる。大輔の未来を信じてるから・・・・・大輔は病院に行くんだ!」



沙良も優哉さんも俺の目の前で涙を流している。

涙を流しながら必死に俺を守ってくれている。

ここで俺の目はさめた。

今、このマラソンを走ると色んな人が悲しむ。

そして俺も。

今、病院に行けばまだ希望がある。

もうすでに遅いかもしれないし、未来はもう完全に黒く染まってるかもしれない。

でも、少しだけ、少しだけの希望を求めようと俺は決心した。

俺のためにも、みんなのためにも。




お姉さんの温かな手が、俺の涙の手を強く引いた。


俺は、細い細い希望の光を信じて、みんなに支えられながら新しい世界に踏み込むことを決心したんだ・・・・。
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