せんせいのせなか
(よく分かんないけど、)
「大丈夫ですか」
そう声を掛けると、苦虫を噛み潰したような顔で男の子は舌打ちをした。
(舌打ちって…!)
「…あの、口から血が、」
「うるせぇな。分かってるよ」
制服の裾で口を拭った男の子のネクタイを見ると、紺色だった。
同じ学年だった。
「血。…喧嘩だってバレたら、反省文とかあるんじゃ、ない、んですか」
少しぎこちなくなってしまい、目線を逸らす。
「…いい。どうせアイツらが遅刻した理由に言うだろ」
「そっか」
そう言いつつ、ハンカチなど女子力の高いものを持っていないので、
仕方ないか、とティッシュを渡す。
「…ティッシュて。乾いてるのなんか傷口にくっつくだろ、普通」
「口うるさいな…」
「はあ?」
大口を開けて睨まれた。
思っていることが口に出てしまった。