せんせいのせなか
上から感じる爽やかな風はスカートをひらひらとなびかせた。
少しベタついた汗が風に吹かれてスッキリする。
タンタンと階段を上り、息を切らしながら屋上へと近づいていく。
古びて重たそうなドアには、薄っぺらい紙で〝天文部〟と記入されていた。
ギイ―――
と錆びた音がすると、一気に大きな風があたしを包んだ。
「おっす香椎!」
「あ、こんにちは、先生」
爽やかな笑顔をこちらに向けて、先生、望月草汰は手を振った。
ぺこりと頭を下げて、風が吹く中、あたしは重たい鞄を置いた。
「先生、星、見えますか?」
「おー…、まあ、もうちょっと様子見るかな」
望遠鏡を手で押さえながら、先生はその場であぐらをかいた。
レンズを服の裾で拭いながら、先生はあたしに話し掛ける。
「今日は、誰と話せた?」
「え、っとー……今日は、隣の席の佐藤くんと、委員長の衛藤さん…」
「二人?」
「…はい」
そうかー、と肩をおろした先生はクイクイ、とあたしを手招きした。