俺の席
俺は今すぐこの「人の気持ちが分かってしまう」というちょっと得そうな能力が
とても、
とても、
せつなく感じた。
なぜなら、
分からない方が幸せだったものも俺には見えてしまう。
感じてしまうんだ。
それが
つらくて
つらくて
胸が苦しかった。
「鳴海は好きな人いないよ」
「そっか、そーだよね」
由井の顔がパーっと明るくなった。
由井は、
多分・・・・・
「あのさっ」
由井が話を続けた。
「健也くんは好きな人がかぶった時どうする?」
「俺は・・・・」
由井の目が真剣だった。
こいつは鳴海にすべて惚れているんだ。
そう、
確信した。
「奪うかな。」
「譲ったりしないの?」
「うん。譲れないほど好きだったらね」
「そっか、ありがとう」
と言うと、
由井は立ち去ってしまった。
由井の背中はなぜか
たくましく
大きく見えた。
それは何かと戦うみたいに・・・。
逃げてばかりの俺とは違って。