俺の席
「あたし、知ってたよ。
茜が鳴海の事好きだって。」



ずっと小さく体育座りをしていた千鶴が
普通に座ってるのに、
なぜか
なぜか
うんと小さく座っているように見えた。

「・・・えっ」


「見てれば分かるよ」


「・・・マジか」



「そんでもって、鳴海は茜の事が好き」



「えっ?!」



「あたし気づいてたんだ・・・。
二人が両想いだってこと。

ゴメンネ・・・。黙ってて。

今だから言えることなんだけど、
悔しかった。

茜が鳴海と両想いですっごい悔しかった。」





千鶴の目からはボロボロと涙が出ていて、
腫れている目がさらに腫れちゃうよ・・・。




「千鶴・・・。」


「ゴメンネ。本当に。
奪えると思ったの。

鳴海を振り向かせられるって・・。
だけど、無理だった。

どこまで鳴海はクソ真面目なんだろうね」







空からは、
冷たい雪が降っているのに
あたしには
千鶴とあたしを包むような柔らかい雪のように感じた。




「早く行きなよ。鳴海のところに」

「・・・・うん。ごめん、ありがとう」



ーーーーガラッ

そこには鳴海くんの姿はなかった。
きっと家に帰ったのだろう。

上着も持たずに、
玄関を飛び出した。

< 32 / 34 >

この作品をシェア

pagetop