cool prince
「…………え?」
「別に、怒ってねぇよ」
そう言った先輩の瞳は、思ったほど冷たくない。
……って、あれ?
何か、先輩の顔が、段々近くなっているような………?
…………っ!!!!
「わああああっ!」
「っ!」
ドンッ
何と、後数センチのところで、先輩とキスをしそうになっていた。
あ、あぶ、危なかったーーー!!
思わず先輩の肩を力いっぱい押し、そして逃げるようにその場から立ち去ってしまった。
ななな何今の!何でっ、キキキキキス…!?いいい意味分かんない!ああああ……!
頭の中はぐるぐるとさっきの先輩の整った顔だけが残っていて、私は無我夢中で走って家まで帰った。
バタン
「ただい、ま…!」
「おかえりー……って、どうしたのはる!」
「あ、……ジョ、ジョギング、」
「制服で!?」
お母さんには意味の分からない嘘をついて、そして足早に自分の部屋に篭った。
…………って、しまった!
ハンカチ忘れてきてしまった……!
あれお気に入りだったのに…。
部屋着に着替えながら、そのことを思い出して私は溜息をついた。
.