Rhythm! 〜花音と謡の恋物語〜


「なぁ、謡…」


さっきから、
宙音が何度も“謡”といっていたが、


これは俺の名前だ。


『明瞭 謡(メイリ ウタイ)』


今日から高校一年生。
15歳。


「なぁ、謡。
謡は何部入る?」


宙音は突然、部活の話を持ち出してきた。


「…帰宅部…」


部活とかって面倒くさそうだし。

正直、したいことも何もない。


「帰宅部ーっ!?
え~。
一緒の部活入ろーぜっ!」


宙音と同じ部活…か。

楽しそうだ。


「…なんの…部活…?」


「当然…
軽音楽部とか、合奏部とか…
音楽系ッ」


音楽系か。


宙音がなぜ、音楽系にこだわったのか、
理由は分かる。



宙音はドラムが好きだからだ。



宙音の家は金持ちで、家にはドラムが置いてあった。

ドラムって、でかいから幅取るのに…

俺の家に置くことは絶対できないな。


…俺はと言うと、ベースをしている。


俺は宙音みたく金持ちじゃねぇから、
ベースも良い値段のものではない。

高くもないし、安くもない。

普通の値段。


俺がベースを始めたのは、中学の時だ。

ある日、父の部屋にあったベースに触れてみた。


触ってみた。

引いてみた。

奏てみた。


…気がつくと、ハマっていた。

ベースに。

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