DOLL
「ありがとヤナ!」

待ってました!とばかりにユラは飛び起きてお礼を言った。

(なんて幸せ者………)

涙を呑みながら、生活に消えた少ない給料が入る財布を持って部屋を出た。



出間際にユラは叫ぶ。

「鍵忘れて大丈夫だよ!」

「ああ、ありがとね…」

弱々しく答えて、複雑な思いで涙を流した。



静かにドアを閉めて、トボトボ歩き始めた。

道に出てみると取り合えずまだ人気はある。


(軽く弁当でも買ってくればいいか…)

そう思ってヤナは活気のある店の方へ歩いて行った。

(それにしても、今日は何かあるのか?……やけに混んでる)

人を掻き分ける勇気もなく、人の間にできた隙間へと足を進めた。


そして変なことを聞く。

「おい聞いたか?さっき向こうで犬の耳が生えた双子の男の子がいたんだってさ」

「え?かわいいね」

「そんなんじゃないだろう」
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