君のいる世界


「篠原悠都[しのはらゆうと]」
それだけ言うとまたケータイをいじり始めた。


「はぁ…。ごめんね!こいつ中学んときからこんなんで」
宇野くんが大袈裟にため息をついたが知らん顔でケータイを見ている。


「宇野くんと篠原くんは彼女いないの?」
上目使いの青木さん。


(女ってこわ)
自分も女だが改めてそう思う。


「俺~?いないよ、残念ながら」
だれかいい人いないかなぁなんて言っている。


篠原くんは
「いねぇ」
とかなり短い返事をした。


私は返事が返ってきたのに驚いた。
絶対返事なんてしないと思っていたから。


「そうなんだ!2人ともかっこいいのにね~♪」明らかに嬉しそうな口調にため息をつきかけたがやめておいた。


「俺はかっこよくないよ~2人は?」
宇野くんの言葉が嘘だということは確実だ。

否定も嫌味っぽくなくていい。


「私はいないよ。彼氏ほしー!」
チラッと宇野くんを見ていたが本人は気づかずに私を見る。


「いないよ。恋愛とか興味ないし」
素直に言うと
「えぇ!?なんで?莉沙ちゃん可愛いのに!」
って青木さんが詰め寄ってきた。


「可愛くないよ。青木さんのほうが女の子らしいし、可愛いよ!」
本当にそう思う。


「え~!可愛くないよぉ!!ていうか青木さんなんて堅苦しいよぉ!彩音って呼んで♪宇野くんたちも♪♪」
ニコニコ笑いながら「友だちじゃん♪」って。


私は小学校以来友だちなんてできなかった。
ずっと下を向いていたし、話しかけられても返事が素っ気ないからだんだんと私に話しかける人はいなくなってた。
そんな私に友だちだと言ってくれる人がいた。


変わらない毎日が少し変わった瞬間だった。


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