いつかどこかで…
時々、車の振動で目を覚ましては彼の香りを嗅いで…また眠りにつく。




車は目的地について、彼は私を優しく起こしてくれた。


『う…ん…。』

目を開けたら、彼がすぐそばにいた。


『祐治…。ついたの?私、ずっと寝てたのね…ごめん』


車を降りたらもう潮の香がして…波の音が聞こえる。

目の前に 古民家風の建物が、ぼんやりと優しく灯りにライトアップされて…とっても素敵…。


『入ろう…』
荷物を持ってくれて、二人で引き戸を開けて中に入った。


部屋に通される途中の廊下の端に置かれたランプが艶のある床を照らして幻想的。


部屋に入ると私はドキドキした…落ち着きのある和室。隣にはブラウンでまとめられたベッド。ここも、灯りがぼんやりと…柔らかく部屋を照らしている。


『素敵…』

『気に入ったか?出張した時に雑誌で見て…すぐ予約入れた。理沙…好きそうだなと思って』


私は言葉が見つからず…彼の首に腕を回して…抱きついた。


キスした。

愛してる…愛してる…

祐治がとても優しい目で見つめてくれる…。


『理沙。ご飯食べよう。遅いけど、ここで食べたくて準備してもらった。』


二人で並んで。


『普通向かい合わせに座らないか?』


『となりがいい。』

彼に、日本酒をお酌した。
私にもくれた。

こんな時間を過ごせるなんて…夢みたい。

時間が止まってしまえばいいのにって何度も思った。
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