いつかどこかで…
胸を押しつける様にして彼の腕の中…。この上ない幸せな気持ち。

私の顔を指でなぞりながら…

『理沙…たまには時間作って…逢って欲しい…』

『うん…』


身体を離して、帰る時が切ない。また…この切なさを感じることになるなんて。

やっぱり祐治と離れる事は出来なかった。


『理沙…また、祐吾にも合わせてくれよ…』

笑った彼の笑顔が…優しすぎて…。


私は彼から離れられなくて…

彼の車で送ってもらう間も彼の肩に寄り添った。


何度も手を振って…


早く家に入れという彼の仕草に、やっとドアを閉めた。


遅かったねと母に言われて…よちよち歩きの祐吾を抱き上げた。


『理沙…ご飯にしましょ』

『お母さん、ごめんね』

母は優しく私の肩を抱く。

涙が…こぼれたけど、母は気付かない振りをしてくれた。

抱いた祐吾が小さな手のひらで頬を包んでくれた。


この子の為にも強くならなきゃ…。


許されない恋に溺れた私に…神様は祐吾をくださった。

この優しくて暖かな命を。

神様…私の罪は一生許さないで。どうか…


私の犯した罪は私の中に閉じ込めて…

どうかこの子を幸せに…できる力だけ…下さい。


私がこうして生きてきた、そしてこれからも生きていく事で…苦しめる人がいる事を…詫びながら…生きていく…。


この子の為に。


…終
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