いつかどこかで…
食事しながら…彼が口を開いた。

『理沙…ゴメン。俺結婚してるんだ…黙っててゴメン』


…。また不倫。私って前世でも絶対不倫してたよね。来世も不倫かな…。


『黙ってるつもりだったの?』

『好きだって気持ちが先にいってしまって。でも…やっぱりダメだよね。』


深刻な顔で…正直に打ち明けてくれた。それは嬉しかった。

祐治は…自分の口で結婚してるなんて言わなかった。暗黙の了解だった。


五歳も年上とは思えない。謙吾は可愛い。


『子供はいるの?』


少し言いにくそうに…

『先月生まれた…俺は悪い男だよね』


私は…いい死に方しないだろうな。また…道理に外れた事をした。奥さん達からしたら、私なんか…汚い女。

ため息…。


『もう…会わない。ゴメン。私も悪かったの。でも…もう無理。会わない。』


謙吾もそのつもりできたのだろう。

謙吾はうつむいて…黙ってる。


『帰るね…』

一人店を出た。涙は出ない。当たり前か。始まる前に終わってしまった。


軽そうな女が…男に遊ばれただけ。


後ろから不意に手を掴まれた。

『謙吾…』

抱きしめられ…。


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