いつかどこかで…
彼は壁にもたれタバコに火を着けた。


私も隣に並んで…タバコをもらった。


吸わないけど、彼といつもこうして…私は火がついてないタバコをくわえるだけ。

お返しに意地悪言いたくなった。
『奥さん…抱いたりする?』


『抱かない…。』


『愛してないの?』


『愛じゃなくて…家族になったら…抱けなくなるね…。随分前にも同じこと聞いただろ…』


憶えてたのか。あなたは妻を家族だからって抱かなくても妻は抱かれたいに決まってる。別れない。抱かない。それは蛇の生殺し。


『私って悪い女だね…』


タバコを消して、ふっと笑った。


私を抱き締めて
『俺も悪い男だ…』


身体が合うから祐治が好きなんだよ…。だから、あなたの総てが欲しいとは思わないの。

なんて…言ってみたい。


ホントはそんな風には思ってない。当たり前。


私の身体を抱き締めて膝の上に乗せた。


向かい合って強く唇を合わせた。


見つめて…キスして。


『んっ…っ』


一年もあなたに付きまとったくせに、格好つける自分が可笑しい。


あなたに偶然逢いたくて…何時間もコーヒー飲みながら、音楽聞いた。


あなたの家から近いショッピングモールで1日歩き回って脚が痛くて泣いた。


あなたと同じ車を目で追った。


あなたが車で通るかもと思うと、いつもお洒落した。

一途なようで、待ちくたびれて謙吾に抱かれたり、私は自分がわからない。


なのに…。聞きたくない奥さんのことを聞いたりして、凄く…胸がいたい。



腰を浮かせて自分で彼のものを迎える。


腰を落として…根元までゆっくり。

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