いつかどこかで…
『そのキスマークのせい?』
私が訊ねると


彼は首をかきながら、笑う。

『前から険悪でさ。妊娠中も喧嘩ばかりで。とうとう実家に帰ったよ。離婚するってさ』


『引き止めないの?』


『…無理なんだ。俺たち』


コーヒーが来て、一瞬会話を止めた。


私もバツイチだからわかるけど…。私達には子供がいなかったから。


…いても別れたかな。


『理沙…俺のところにこいよ』


『無理よ。こないだ祐治にあったの。身体中のキスマーク見て怒ってた。』


謙吾は黙ってコーヒー飲んだ。



『俺のところにこいよ』


気持ちは揺らがなかった。

謙吾は好き。でも、たとえ謙吾とは結婚出来たとしても、子供を生めたとしても…。そういうことじゃない。


その一つも叶えてくれない祐治の事が…好きなの。

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