いつかどこかで…
祐治とは逢う→イコール、ホテルだったから。

こんなのあり得ない。私って身体だけ求めてる女なんかな。でも…謙吾に抱かれたい気持ち…。



上機嫌の謙吾の髪を撫でた。


『理沙…うちにくる?』

『はあ?嫌よ…』


謙吾は残ったビールを一気のみした。


『あの家手放すんだ。二人でローン払うつもりで建てたからね…。理沙…一緒に払おうよ〜』


『何で私が払うのよ。ばか』


謙吾…大変なんだね。不妊症、奥さんは誰かの子を生んだ、離婚、家も手放す。まだ35歳なのに激動の人生を歩んでる。


『出ようか…。』


店を出て謙吾はタクシーをつかまえた。


二人で乗り込んで彼は自分の住所を告げた。


『謙吾…』

タクシーの中で謙吾は私に寄り掛かって寝てしまった。


『謙吾…起きて。ここでいいの?謙吾!』


ん〜と伸びながら起きて、しかめっ面して外を見る。


料金払って、私の手を引いてタクシーを降りた。


二人で立った謙吾の家の前。まだ新しい、その可愛らしいデザインに奥さんの趣味を感じる。


真っ暗。寄せ植の花が枯れてる。

何だか…涙が出た。


家の前で二人しばらく立ってた。


『入ろう。もうすぐ手放すからさ。理沙に見せたい』

玄関のライトが点いたら、クリーム色の壁が照らされて、素敵な家なんだなってあらためて思った。

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