きみへのおくりもの
「おう」
リュウジもサトシの笑顔に微笑を返した。
「サッカーマガジン・・・たくさんあるな。サッカー好きなのか」
何気なく小棚を見て呟くリュウジ。
「サトシは中学んときは学校の部活じゃなくてグラブチームでずっとサッカーやってたんだ。リフティングやらせたら、サトシの右に出るヤツなんかいないぜ」
和也が得意気に答えた。「そうか・・・心臓病にもそんな特技があったのか。なら早く治してもう一度チャレンジしてみろよ。俺たちが応援してやる。なー和也」
「うん」
サトシの顔から急に笑みが消えた。
和也とリュウジは押し黙っているサトシをじっと見つめた。
「僕・・・幼稚園の頃からずっとサッカーが好きでサッカーばっかりやってた。パパも将来はサッカー選手になりたいって言ったら・・・夢を持ってがんばれって言ってくれた。でも、高校に入ったら、パパは「お前は心臓が普通じゃないんだからいつまでも夢を見るな」って僕からサッカーを取り上げたんだ」
「・・・」
「もちろんわかてったよ。僕の心臓が他の子とは少し違うのは・・・。だから、あきらめるしかなかった。それにもうイヤなんだ。また夢を持ってその夢に向かって一生懸命に生きようとしても、パパや医者にその夢を奪われてしまうのが・・・それなら僕は何もしないでここにいるしかない」
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