きみへのおくりもの
男たちはそれぞれのバイクにまたがり、エンジンをかけて爆音を鳴らし始めた。
「しっかりつかまってろよ」
リュウジはバイクにまたがると、サトシの両腕を自分の腰にしっかりとつかませた。
「行くぞ、これが集会だ」
リュウジたち・ヘルズ軍団の群れは病院を飛び出し、国道246号線をぶっぱなした。渋谷駅前のスクランブル交差点ー東京都庁ーを回って、最後は湘南に向かった。途中、パトカーが数台ついてきたが、ケツモチの腕前で湘南に着く頃にはパトカーをすべてまくことができた。
サトシはその光景を目に焼き付け、何度も興奮した。
湘南に着くと、もう朝日が少し顔を出していて、男たちはバイクから降りて朝日に輝く海をみつめていた。
サトシも自分でバイクから降りて歩こうとした。が、何歩か歩いたところで転んでしまった。
「大丈夫か」
リュウジが手を貸そうとすると
「うん、大丈夫」
と自分で立ち上がって、生き生きとした目で海を見つめた。
「キレイな海だろ。お前にこの海を見せたくて、今日はみんなに協力してもらったんだ」
「病気なんかに負けるなよ」
「また一緒に走ろうぜ」
男たちが次々にサトシに激励の言葉をかけた。
サトシは嬉しくて胸一杯になった。
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