きみへのおくりもの
「しつこいね。僕は勉強中なんだ。今の僕には少しの時間もムダにできないんだよ。 君、その制服、どこの高校?」
「そんなの関係ねぇーだろ」
学生は鼻で笑ってから 「僕の制服見ればどこの高校がわかるだろ。君とは学んでいることがぜんぜん違うんだ。悪いけど、気安く話しかけないでもらいたい」

言って、参考書に目を戻した。
「この野郎・・・人を見下しやがって・・・」
そのとき、ばあさんが和也の胸に倒れてきた。
「だ・・・大丈夫か!ばあさん、次で降りよう」

「ちょっと目眩がしただけや。あたしは大丈夫やから、はよー学校に行きなはれ。遅刻するでー」
「一回ぐらい遅刻したって大丈夫だよ。どこまで行くんだ?駅までなら付き合うよ」
「いや、今日は調子が悪いみたいやから、こっからタクシーで行くわっ」
「じゃ改札口までおんぶするよ」
和也はそう言ってしゃがみ、ばあさんをおんぶした。
「なぁー坊主、1つ聞いてもええか?」
「ん・・?」
「こんなことしても何の得にもならんやろ。今日やって遅刻やないか・・。何でそんなに親切にするんや」
「俺は別に損得で生きている訳じゃない。年寄りが目の前にいたら席を譲ってやる。それを平気で無視するヤツなんか、いくら頭が良くたってくだらねェー人間だよ」
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