きみへのおくりもの
児童擁護施設・星明学園には、サトシママが運転する車で向かった。助手席にはサトシ。後部座席には和也と加里奈。
「いいんですよ。サトシがこんなに喜んでいる姿見たの初めてですもの・・・。わたしのほうがお礼を言いたいぐらいだわ。きっと初めての外出でうれしいのねっ」
バックミラーに映る加里奈に微笑むサトシママ。 「初めての外出ねー」
和也が意味ありげに、ニヤニヤしながらサトシのほうを見た。
サトシは慌てて振り向き、シーっと人指し指を自分の口許に当てた。
星明学園に到着すると、長い髪を無造作に束ねた山野京子という先生に迎えられた。
「どうぞ」
京子先生の案内で園内のホールに入る。
サトシはリュウジからもらった松葉杖を使って歩を進めた。車椅子は、海に行った日以来使っていない。
「肝心のリュウジはどこにいるんだー」
ホールを見渡す和也。
「リュウおばちゃまなら・・・あそこにいるわ」
「リュウ・・・おばちゃま・・・??」
和也とサトシは京子先生の指先に顔を向けた。
「!!?」
同時に唖然ー
そこには七色のカツラを被り、作り物の長い鼻をつけた絵本に出てくるような魔法使いのおばあさんが踊っている。間違いない。よく見ないとわからないが、あれはリュウジ・・・いや、リュウおばちゃまだ。
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