からふる・ぱれっと

汐莉は徹という男の下へ帰るんだろう。


そう思うともやもやして苦しかった。


「…着きましたね。」


気付けば駅に着いていた。


「明良君…。」


「えっ…。」


汐莉が頬に手を添えてきた。


そして静かに口づけをしてきた。


「…昨日の夜、明良君にあたしの全て奪って欲しかったな…。」


「えっ…。」


「…あたし、明良君のこと好きになってしまったのかも。」


「しおっ…。」


「でも、明良君はあたしが彼の下に帰ってもいいみたいね。…さよなら。」


「待っ…しおっ…!」


汐莉の姿は人混みに紛れてしまって見失ってしまった。


それっきり汐莉を見かけることはなかった。

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