[SSS~SS集] 曖昧エレジー
◆死を彩る鮮やかな色
( @:カオス )
「なぁ、」
「……」
「なぁって、」
「……」
愛しかったはずの彼女は、俺の目の前で横たわったまま、何一つ俺への反応を示さない。
ついさっきまで、呼び掛ければ明るい笑顔を向けてくれたのに。綺麗な声で答えてくれていたのに。
何で。どうして。
蒼白な彼女の顔、白いノースリーブのワンピースから伸びる長い四肢。全体的に白い彼女は、儚くて、なぜだか遠い存在であるように思えた。
刹那、ある一点の異変が、俺を思考の底から引き上げる。…否、それを異変と呼ぶのは少し違うような気もするが。
横たわる彼女の腹部、そこに滲む残酷なまでの紅。その色を鮮明に視認するとともに、俺の中で何かが弾けたように、ある記憶を彷彿させた。
そしてふと、その記憶に導かれるように、自らの両手に視線を落とす。すると視界に映ったのは、何よりも鮮やかな色彩。彼女の白を染めていた色が、俺の両手までを染めている。
…――ああ、そうだ。
血濡れの両手を見て、ふと、気がついた。全てを、理解した。何もかも、思い出した。
…――そうか、君はもう死んだのか、と。他の誰でも無い、俺が殺ったのだ、と。
死を彩る鮮やかな色
( 愛しいが故に )
( 君を殺した )
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