[SSS~SS集] 曖昧エレジー
◆くだらない世界
( @:カオス的なSS )
“死にたい”―――…
なんて言ったら、彼はどんな顔をするのだろう。
“バカなことを言うな”と、
私を引き留めてくれるだろうか。
それとも、“勝手に死ねば”と、
冷たく言い放たれるのだろうか。
否、微かな動揺さえも表さないであろう彼の無表情な顔を想像し、思わず苦笑した。
第一、私が今日この世に別れを告げたとして、明日には何の変化が起こるというのか。
たくさんの個体が存在し、それで成り立つこの世界の中、一個体にしかすぎない私が死んでも、変わることなどありはしないのだ。
何事もなかったかのように時は巡って、いつか、私が存在したという事実さえ周囲から忘れられてしまうのだろう。
―――あぁ、なんてくだらない。
「ねぇ、私が死んだらどうする?」
それでも。
心底くだらないと思いつつも、そう彼に問いかけてしまうのは一体何故なのか。
私は彼に悲しんで欲しいのか、はたまた喜んで欲しいのか、自分自身でさえ真意はわからないけれど。
「お前が死んだら…?わかんねぇよ、考えたこともねぇ。ただ…」
「ただ…?」
「少なからず、喪失感は生じるんじゃね?何かが欠落したような、深い悲しみと一緒に。」
相変わらず無表情に言い放たれた言葉に、少しだけ、まだ彼の傍で生きるのも悪くないな、そう思えた。
くだらない世界
( それでもきっと、)
( 彼は私のために )
( 悲しんでくれる )