僕は君のために口笛を吹く
「うーんとね、…雪かな!」
この辺は毎年雪がほとんどふらない。
しかも今は11月上旬。
…いや、だからこそかな。
「うーんと綺麗で細かいやつね!」
『わかってるよ』
それが君の望みで、君が笑顔になるなら。
そのくらい、簡単さ。
俺は右手の人差し指と親指を、円状にしてくわえた。
そして、天まで届くくらいに口笛をならした。
音はスーッとのびていき、消えた。
消えたのを合図にしたかのように、小さな雪たちが降って来た。
「…わぁ…すごいね!つき!」
窓に走るひかる。その横顔に、俺はある面影をみた。
『…!?』
目の前が振れた。
ウソだろ…。
“これだけ”で、体にガタがくるのか…!
「…−つき−…!?」
ひかるの手が俺の手を掴む前に、俺の意識は、闇にのまれた…。