僕は君のために口笛を吹く
「…聞きたい事があるの…」
俯きかげんに言うひかる。俺は焦った。
もし、あの事を聞かれたら−…。
「…つき、私のために無理したの?」
『え?』
「だって、雪降らせた瞬間に倒れたし…。
運ぶにも透き通るし…。」
『いや、それは…』
いつもの事だろ?
安心してくれよ…。
それを口に出すまえに、ひかるが言う。
「それに!…ずっとうなされてた…。
苦しそうに。…私、聞いちゃったの!」
ひかるが、それだけ言って止まる。
“何を?”
そんな事、聞ける筈がない。
恐いんだ…。何を知られても…。
「……何をだっけ……?」
『…へ?』
「…そもそも、何がこんなに…?」
“悲しいんだろう”
その言葉が口から出る前に、ひかるの目から、涙がこぼれ落ちた。
『…ひかる…。ゴメンな。心配かけちゃって。』
涙の理由も解らなく、怯えるように縮こまる、ひかる。
俺は寄り添うように近づいた。
「…っ…解らないよ。…つき…。思い出せないの。なん−…」
ハッとしたように顔を上げたひかる。
俺を見てくる。
「…つき、もしかして、私のお…」
「ひかるー!下りてこーい!」
俺は二つの意味でビクッとした。ひかるは名残惜しげに「…いってくるね。」と、部屋を後にした。
哲志の声が有り難かった。
ひかるの、あの瞳が怖くて……。
ていうか…、俺、ひかるに寄り添おうとしたな、……触れられないのに?
泣かせたのは、俺のくせに…?
願い一つ叶えられなくて、笑顔もつくってあげられなくて…?
ふざけるなよ…!!!
俺は自己嫌悪に入る。
それでごまかしたんだ。
自分にさえも嘘をついて…。
最低だ…。
だよな…美月…。