僕は君のために口笛を吹く
僕の師
“お前…変わっておるな…?”
『…?』
“感情を持っておる…。ハハ…面白い!”
『…!』
狭間の空間で俺を見つけた師。すぐさま俺に「形」を与えた。
“さぁ、行こうではないか!”
何も解らないまま、差し出された手をとり、狭間から抜け出した。
<オ前ハ…?>
口に出さずに伝えようとした。表情も、どんな顔が、何を表すのか、わからなかったから…。
“フン。口のききかたを教えねばな”
優しい目を俺に向け、天上までずっと語り続けて下さった。
学びこそ最大の悦びだと、師はおっしゃった。
だから俺は、何か教わる度に悦びを表現しようとした。
地上の様子の見える泉で、人の笑顔というものをみて、<これだ…!>と思った。
練習したんだ。
師は、俺が学んだことをして見せると、とても喜んでくれた。
−それが嬉しいんだ−!
師に笑いかけた。
『−…ぼく、ハ、うる、…シい?』
師は目をまるめた。
そして、すぐに微笑んだ。
“自分で練習したのか…?すごいぞ!”
それに、うるしいじゃなくて、うれしい、だぞ。
と、付け足した。
それがまた嬉しくて、俺はずっと笑っていたんだ。
それからおよそ一年。
知識は師の3分の2程度にまで追いついた。
そして、消えない好奇心が、遂に罪を犯してしまったんだ−…。