僕は君のために口笛を吹く
私の事<ひかる目線>
ヒソヒソと聞こえてくる。
大人達の声。
“かわいそうにね”
“まだ8才でしょう?”
“近い親戚もいないらしいわよ”
…うるさい…。
“両親も若かったのにね”
…うるさい…!
“仕方ないわよ。遊んでたんでしょう?”
うるさい!
“やあね、最近の人達は。”
…−もうヤメテ!!
パパとママを悪く言わないで…!!
目を開いた。
そこは、いつも通りの違和感のある場所。
私が親戚の家をたらい回しにされ始めて7年。
もう、ほとんど知らない家ばかり。
今日はまた、違う家に行く事になってる。
辛くなんかないよ。
もう慣れっこだもん。
笑ってお礼を言うんだ。
たったの2ヶ月だったけど、感謝しないといけないよね。
そして私は、布団をきれいに畳み、荷物をまとめた。
「…それじゃあ、お世話になりました。」
玄関で見送ってくれているのは、一番世話を焼いてくれたおばさん。
「…なんだったら、また来なさいね?」
優しい人だ。
私はもう一度笑顔をつくる。
「自立したら、お礼しに!」
また来ます。
そんな思いをこめた。
これで、私がお世話になった家の数は20を越えた。
嬉しいような、悲しいような。
変な感じ。
本当にいろんな経験をした。
嫌味を言われたり、無視されたり、軽い暴力を受けた事もあった。
−…でもね、あんなに崩れた家族は、これまでにはなかったんだ。