僕は君のために口笛を吹く
私の家
一見、どこにでも在りそうな家だった。
ただ−…、
まとう空気は、他と全く違った。
「東陽ひかるです!
短い間ですが、どうぞよろしくお願い
します!」
いつも通り笑って飛び込んだ。
「…誰…?」
玄関から人が出てきたと思ったら、同い年くらいの男の子に眉を潜められた。
「あ、今日からこちらにお世話になる事に
なっていた筈なん−…」
「…あ、どうぞ」
話の途中で彼は私を招き入れた。
私は内心少しふて腐れていた。
年下だったらもっと許せない!
「…−母さん、東陽さんだよ。」
リビングまでついていくと、ソファには女の人が、腰を丸めて座っていた。
−…!
その女の人の視線の先をみて、私はだいたいのこの家の状況を察した。
大黒柱を失って崩れたのか…。
女の人の視線の先には仏壇が。そして、その上には眩しいくらいの笑顔を浮かべた男の人ね写真が。
「…初めまして。私、ひかるです。」
私は彼女の隣にひざまづくように語りかけた。
彼女は私を見つめて来た。
クマのできた、光のないような目。
大丈夫なんだろうか−…?
「……陽助、2階の、空き部屋に…」
「…うん。わかった。」
ようすけ…?
この男の子の名前だろうか?
ついて来るように促されたので、私はそのまま、彼についていった。