僕は君のために口笛を吹く
「…あの、ようすけさん…?」
「俺は哲志。陽助は父さんの名前だ。」
さとし…?でも、女の人は−…。
「…俺や兄貴の事は覚えてない…」
あ…。
「…あの…、すみません。」
私は浅く頭を下げた。
悪い事聞いちゃったなぁ…。
「ここは自由に使っていいから」
それだけ言うと、さとしさんは出ていった。
「−…ふぅ、やりますかなー…」
『…何を…?』
「そりゃ………………え…?」
誰もいない筈の部屋に、少し低めの声がこだました。
驚いた私は勢いよく顔をあげた。
『−…彼らを救ってくれるのか…?』
雫が落ちるように、彼は現れた。
「…貴方は…?」
私は、いたって冷静だった。
彼は、普通の少年の姿をしていたから。
『−…俺は…。そうだな…』
彼は考えながら悲しげに微笑むと、浮いた足を床につけた。
『この家の…魔法使いかな。』
フニャリ。彼の笑顔はそんな感じ。
綺麗な…銀髪…。
私は無意識に彼に手を伸ばしていた。
すると、一瞬触った。と思ったら、スルリと透き通ってしまった。
『−…美…月…?』
−…え?
「つき?」
私がそう言うと、彼は慌てるように私から離れた。
「貴方、つきっていうんですか?」
『…は?』
あれっ!?違うのかな?
でも、つきって言ってたよね?
聞き間違いかな?
『−…じゃあ、そう呼んで。』
また、フニャリ。だ。
不思議な雰囲気をまとう、つきさん。
彼とこの家が、私を大きく変えたんだ。