僕は君のために口笛を吹く
「東陽ひかるです!
短い間ですが、どうぞよろしく
お願いします!!」
親戚の家をたらい回しにされた結果、とうとう、ほとんど知らないような家にまで来たひかる。
持ち前の笑顔で色んなことを切り抜けて来たが、流石にこんな家は前例がなかっただろう。
母親は放心状態で毎日黙って動かない。
長男は学校から帰ると部屋にこもり、黙々と勉強し続ける。
次男は学校を二日に一回のペースで休む。
同じ学校になったというのに、一言も言葉を交わさない。
それぞれご飯もろくに食べず、部屋も散らかっていた。
俺の場所でもあったから、
すっげえ息苦しかったな。
思い出したくもないわな。
ま、今思えばあいつは本当に格好よかったな。まるで勇者だった。
「ただいまー!」
お、勇者のお帰りだ。
久しぶりに出迎えてやろう。
って言っても多分哲志の前だから喋れない
ここは俺の場所だけど、全てが自由って訳じゃない。
きっと、二度と良からぬ事をしないように、神様か仏様か、そんな誰にも逆らえないようなものが、俺を縛り付けたんだろう。
俺は孤独な存在。
自由も、実体も、かつての能力も奪われた。
誰にも理解されない。
俺の場所以外には。