僕は君のために口笛を吹く
彼女の名は、美月(みつき)。
彼女は全てを見透かしていたようだった。
瞳は、“無”に等しかった。
“私は、何も持っていない”
そんな儚さが伝わってきた。
だからかもしれない。
だから、互いに寄り添いあったのかもしれない…−。
俺は美月と出会って、ますます地上に降りる時間が増えた。
禁じられたにも関わらず、俺は通い続けた。
感じた事のない、“安らぎ”を求めて。
美月は、俺に驚いたり、遠ざけたりはしなかった。
温もりを知らない筈の美月は、誰よりも優しかった。
美月にも、家族がなかったのだ。
降りて来た俺に、毎日新しいものを教えてくれた。
俺は、毎日ワクワクしながら聞いた。
俺は−…彼女がスキだったんだ。
そんな幸せが崩れるなんて、
俺は思ってもみなかった。