キミに真心をこめて
遥の母親がリビングを出たから、俺もその後についていった。
二階に上がる階段を、ゆっくりと昇っていく。
階段の軋む音がやけに大きく聞こえて、俺の心臓の音がかき消されていた。
『あの子は、一番奥の部屋にいるわ。』
辿り着いたのは、薄暗い奥の部屋。はたから見ればただの物置部屋だ。
『入るわよ。』
トントンッ
俺が頷くと、遥の母親は扉をノックした。
『遥、入るわね。』
中から返事はない。ただ扉が開く音が、響き渡るだけだ。
『さぁ、どうぞ。』
ゆっくりと部屋に入る。
中は意外と光が射していて、よく見えた。
インテリアな机に、本棚やテーブル。お人形もある、女の子らしい部屋。
そして、窓際にあるベット。
一人の女の子が、ベットから身を起こしていた。
紛れもないその女の子こそ、会いたくて会いたくてしょうがなかった。
遥だった。