キミに真心をこめて

駆け寄ったとき、どうして気付かなかったのだろう。


所々引き裂かれた服。
ボサボサの髪。
殴られた跡のある顔。


やはり、電話で聞いた話は本当だったんだ。
現実なんだ。


おばさんはその時、一筋の涙を流した。


『お母さん、ちょっとよろしいですか??』


おばさんの様子を察した刑事の折上さんが、別室へと案内してくれた。


『これでも飲んで落ち着いて下さい。』


差し出されたのは温かいお茶。
湯気がやけに目に染みた。


『先程の電話でもお話した通り、お嬢さんは…遥さんは…。』


静かな部屋で折上さんはまた、真実を告げる。


『レイプされました。』


レイプ。
まさか自分の娘がそんな目にあうなんて…。


現実感が無さすぎて、いつのまにか涙も乾いていた。

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