キミに真心をこめて

そこにはボロ小屋と、俺と洋平のチャリが二台置いてあるだけで、ほかには何もなかった。


もちろん、誰もいなかった。


『………当たり前だよな。』


俺はどこかで期待していたのだろうか。


たとえ幻でも、遥に会えることを。


馬鹿らしい。かごに鞄を乱暴に入れると、足早にその場を去った。


途中、道場の前を通ると剣道部の威勢の良い気合いが聞こえてきて、外には柔道着を着てマラソンをしている洋平の姿があった。


俺も練習でたかったなぁ…。


でもきっと、今日のこの状態じゃ練習に身が入らないと思う。


先輩や顧問に一括されて終わりだろう。


それだけは…勘弁だな。
< 29 / 130 >

この作品をシェア

pagetop