キミに真心をこめて
そこにはボロ小屋と、俺と洋平のチャリが二台置いてあるだけで、ほかには何もなかった。
もちろん、誰もいなかった。
『………当たり前だよな。』
俺はどこかで期待していたのだろうか。
たとえ幻でも、遥に会えることを。
馬鹿らしい。かごに鞄を乱暴に入れると、足早にその場を去った。
途中、道場の前を通ると剣道部の威勢の良い気合いが聞こえてきて、外には柔道着を着てマラソンをしている洋平の姿があった。
俺も練習でたかったなぁ…。
でもきっと、今日のこの状態じゃ練習に身が入らないと思う。
先輩や顧問に一括されて終わりだろう。
それだけは…勘弁だな。