キミに真心をこめて

『昔多かったらしいなぁ。』


屋上のドアの前に立った瞬間、洋平が突然言い出した。


『え、多かったってなにが??』


『鍵を壊す奴。新しい奴を付けても、すぐに壊す奴がいたんだってさ。だから今は鍵掛けててないらしい。』


あ、そういうこと。七不思議でも何でもないわけね。ちょっとガッカリだわ。


『そんな奴らがいたとはね。開けるぞー。』


ドアノブを回して静かに扉を開けると、心地よい風と綺麗な青空が広がっていた。


『久しぶりに屋上来たなぁ!!!』


『洋平、フェンスから落ちるなよ。』


『馬鹿、落ちねぇよ。』


俺たちが屋上を満喫しているときも、猪股はさっきの表情を崩さず、ただ見える景色を眺めているようだった。

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