キミに真心をこめて

ドンッッ


『いってぇぇぇ!!』


朝の目覚めは最悪だった。


硬い感触と、頭に受けた痛み、鈍い音で目が覚めたからだ。


な、何なんだよ。今のは!!!


慌てて体を起こすと、俺が寝ていたベンチのすぐ下にボール。


そしてボールのすぐ横には五歳くらいの男の子が立っていた。


男の子は申し訳なさそうな顔と声で


『お兄ちゃん、ごめんなさい…。』


と謝ってきた。


多分、近くでボール遊びをしていて、たまたま俺に当たっちゃったんだろうな。


痛かったけど、まぁ俺だってもう十六歳だ。こんなことで怒る程、もう子供じゃない。


『別にいいよ。はい、ボール。』


俺は精一杯の笑顔でそう言うと、子供も笑顔でボールを受け取った。


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