no title
「…で、希々ちゃんの横の君は?」
もしかして希々ちゃんの彼氏?
そう言って、クスクスと笑う林道は、賢太に視線を向けた。
か、彼氏…!?
いや違うよ、そう口を開こうとした時。
「俺は芽宮賢太、希々の幼なじみだ」
「ほうほう、芽宮クンは希々ちゃんの幼なじみ、ねぇ」
「あぁ、」
因みに字は、こうやって書くぞ。と、賢太は取り出した小さなメモ帳にボールペンを走らせる。
"芽宮 賢太"と、横に並んだ綺麗な文字。
……あ、私もそうすれば良かった。
「まぁ、希々と一緒に宜しくしてくれよ」
「あっは、こっちこそ宜しくね」
す、と掌を差し出す林道と、それを握る賢太。
なんだか、変な気分。
友達?、ができて、嬉しいはず、なのに。
…………あぁ、私は今、嬉しいんだ。
優しい友達ができて、嬉しい。
だけど、少しだけ、ほんの少しだけ、寂しく思うんだ。
妹か弟が生まれてくるような、そんな気分。
自分がお姉さんになるのが、妹か弟ができるのが嬉しいのに、
お母さんやお父さんを取られてしまう不安のような、悲しさのような。
うん、そんな、不思議な気持ち。
「………希々?どうした、ぼーっとして」
「希々ちゃん、大丈夫?体調でも悪い?」
心配そうに私の顔を覗き込む2人を見て、私は小さく笑った。
一あぁ、私。
「なんでもないよ」
一この高校に入学して、良かったかもしれない。