no title
「え…と、でも…」
…ごめんなさい。
そう言って俯くと、ははは、と困ったような小さな笑い声が頭上から聞こえた。
「………じゃあさ、こうしよう」
怖ず怖ずと視線を上げる。
目の前には優しく笑う林道。
林道と私の間の距離はさっきより離れていて、あぁ、気を使ってくれたんだな、と思ってしまった。
………自意識過剰だぞ、自分。
そんなことを考えていると、林道の唇が動いた。
「お詫びに、俺がキキちゃんを他の男から守ってあげよう」
君1人じゃ、学校中の男から守るのは大変でしょ。
そう言いながら賢太を見る林道。
……守る?
私、を?
賢太を見ると、顎に手を当て、難しそうな表情で何か悩んでいるようだった。
ちらり、と林道を見る。
それに気付いた林道は、どう?と人の良さそうな笑顔で首を傾げた。
「……希々、どうする」
「…え、」
突然隣から聞こえた声に、少し反応が遅れた。
隣を見上げると、真剣そうな賢太の表情。
どうする、って……。
「どうす、る…?」
「いや、聞き返すなよ」
「や、だって…」
どうすればいいの。
訳が分からなくなってあたふたとしていると、はぁ、と賢太の溜め息が聞こえた。
うわ、絶対に呆れられたよ。
まぁ何時ものことだけど、ね!
どうしよう、そう思って林道を見ると、にこにこと笑う瞳と目が合った。
「俺的には、キキちゃんが危険な目に合う確率も少なくなるだろうし、俺もキキちゃんと仲良くなれるから、いいと考えだと思うんだけどなぁ」
「おい、メインは絶対希々と仲良くなることだろ」
「あっは☆」
でも、どうかな?
そう言って私と賢太を見る林道。
「えっと…、」
どうしよう、と賢太を見ると、希々の好きにしたらいい、と言われた。
林道を見ると、まだこちらを見て笑っている。
悪い人、ではなさそうだし、まぁ…
「………宜しく、お願いします」
ぺこりと頭を下げると、やった、と嬉しそうな声が聞こえた。