隣の男はよく見える
それからお隣ばかり見てた。
気になる・・・
地元の大学の歯学部の学生
友人も多いらしく男女を問わず頻繁に出入りしてた。
ある日―――
「さくら、あなた家庭教師つけない?」
母親が急にそんなことを言い出した。
「何で?別にいい。塾行ってるし。」
分ってた。
塾なんて全然役に立って無いほど成績が落ち込んでいて、
それを母親が良く思ってないこと。
でも、娘にあまり関心は無いことも。
進学のことが気になるのは自分の生徒が優先。
だけど、教師の娘が馬鹿じゃ世間体が悪いってことで・・・。
「塾よりもうちで落ち着いて勉強した方がいいんじゃないかと思って。」
「いいよ、塾で。」
私は、知らない人と二人っきりで勉強なんてごめんだった。
それに、最近ムズカシイ年頃になった弟の静の面倒見てるだけで充分、
なのに他人にまでうちの中で気を使いたくなかった。
が、母親の次の一言で・・・
「お隣の息子さんにもう頼んじゃったのよ。」
お隣の・・・息子?
それって・・・
「分った。頼んじゃたんなら・・・しょうがないし・・・。
こっちから頼んで断るのも・・ね。」
私にとって又とない・・・
天から降ったような・・・
出来事だった。